抄録
植物病原細菌Ralstonia solanacearumによって引き起こされる青枯病は,ジャガイモ,トマト,ナス,タバコ,バナナなど主要な作物植物に被害を与え,農業生産上の大きな問題となっている.その病徴である萎凋症状は,R. solanacearumが植物の根や傷口から侵入して通道組織中で増殖し,菌体外多糖類を生産することによって植物通道組織中の水分移動が阻害されることが原因と考えられている.これまでに,植物体に対するR. solanacearumの感染メカニズムについては,ゲノム解析を含めて多くの研究成果が報告されている.一方,植物体における防御反応機構と抵抗性誘導については不明な点が多い.そこで,本研究では非親和性および親和性のR. solanacearum菌株を接種したタバコ葉(Nicotiana tabacum L. cv Xanthi)からmRNAを抽出し,ナス科コンソーシアムで作製された約11,000個の独立したESTクローンがスポットされたトマトマクロアレイフィルターを用いて,病原体感染時の応答反応と抵抗性誘導について網羅的遺伝子発現パターン解析を行った結果について報告する.