抄録
レーザーマイクロダイセクション(LMD)システムは、組織・細胞レベルでの発現解析を理論的には可能にしたが、植物での適用例は少ない。原因として、動物組織に比べて凍結切片を得にくい上にRNA回収量が少なく解析に必要な量を得ることが大変困難であることが挙げられる。我々は、LMDにより採取・抽出した、約0.5ngのtotal RNAから調製したcDNAライブラリーについて報告する。超微量のRNAからライブラリーを作製する場合、通常はT7 RNA polymerase based in vitro transcription(T7 IVT)を用いる。しかし一回増幅を繰り返すごとにcDNAの平均長が約半分になってしまうことが難点であった。SMART法を用いてシロイヌナズナの髄をLMDによりサンプリングし抽出したtotal RNAから5’末端側の3697 ESTsを得た。このESTsは完全長cDNAを30%近く含んでおり、Blastnでアセンブリングしたところ、singletsが全体の70%近くを占めた。この結果は、LMDで採取したサンプルから作製したライブラリでも解析に耐える品質を保持していることを示している。さらにSMART法とT7 IVT法で増幅したcDNAを用いたマイクロアレイの比較結果もあわせて報告する。