抄録
植物では導入した遺伝子やそれと相同な内在性遺伝子の発現の不活性化が高頻度に生じる。これはジーンサイレンシングと呼ばれ、導入遺伝子の染色体上への挿入位置、コピー数の増加、反復構造、mRNA量の過剰蓄積などが原因とされている。植物では、導入遺伝子が染色体上の異なる領域に挿入され、反復や欠失が統一性なく起き、高コピー数を保持する形質転換体は、反復構造の形成や蓄積mRNA量の増加を同時に伴っている。このような形質転換体を用いた解析では、サイレンシングを引き起こす要因を明らかにすることは困難である。我々は、まず反復や欠失を伴わないシングルコピー形質転換体を注意深く取得した。10個体の染色体上の異なる領域に挿入された導入遺伝子(pBI121)の発現は同程度でサイレンシングは認められなかった。次に、掛け合わせによりコピー数を増加させ、サイレンシングが引き起こされるか解析を行った。その結果、2、3、4、5コピーまではコピー数に相関したGUS活性の増加が認められたが、6、7コピーではGUS活性が検出できず、サイレンシングが引き起こされた。現在、これらの個体についてさらに解析を進めている。