抄録
土壌中に蓄積した有害重金属であるカドミウム(Cd)を植物により土壌中より効果的に除去するためには、植物が根から吸収したCdを効率的に地上部へと移行させる必要がある。Cdの地上部への移行は主に導管経由であると考えられることから、本研究では導管に存在するタンパク質に着目し、導管におけるCdの輸送機構の解明を目指した。
供試植物としては水耕栽培したアブラナを用いた。植物体のCd処理は10µM、30µMの濃度で塩化カドミウムを水耕液中に添加することで行った。コントロールの植物及びCd処理を行った植物より導管液を採取し、導管液タンパク質のCd処理に対する応答を調べた。
採取した導管液中のタンパク質濃度をBradford法により測定すると約13 µg/mLであり、Cd処理は導管液タンパク質の濃度に影響を及ぼさなかった。SDS-PAGEによりタンパク質を分離後、銀染色法により検出するとアブラナ導管液中には根、葉、葉柄、篩管液中とは異なる組成でタンパク質が存在することが確認できた。導管液タンパク質の中で分子量20kDa、45kDaのものはCd処理により存在量が増加し、分子量50kDaのタンパク質はCd処理によりその存在量が減少していた。今後はこれらのタンパク質についての構造やカドミウム結合性に関しての解析を行う予定にしている。