抄録
ホウ素は植物に欠乏害と過剰害の両方を引き起こしやすい必須栄養元素である。シロイヌナズナBOR1は、導管への積極的なホウ素輸送を行う排出型ホウ素トランスポーターであり、そのタンパク質蓄積量はホウ素栄養状態によって翻訳時あるいは翻訳後に制御されていている。本研究では、35S:BOR1-GFP形質転換植物の根端において、BOR1-GFP融合タンパク質の細胞内局在を解析した。BOR1-GFPは低ホウ素条件下では細胞膜に局在し、高濃度のホウ素添加後30分以内に細胞内のドット状のオルガネラに移行し、数時間後には消失した。さらに、小胞輸送およびタンパク質分解に関する各プロセスの阻害剤を用いた解析から、BOR1はエンドソームを経由し液胞に輸送され、分解されることが示唆された。植物は、低ホウ素条件下にBOR1を細胞膜において機能させ地上部のホウ素欠乏害を防ぎ、ホウ素十分条件下にはBOR1をエンドサイトーシスさせ分解し、ホウ素の地上部への過剰輸送を防いでいると考えられる。