日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのモリブデン含量を制御する遺伝子の同定
*戸松 創高野 順平林 浩昭米山 忠克高橋 秀樹藤原 徹
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p. 506

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抄録
モリブデンは植物の生育に必須な元素であり、欠乏と過剰は農業上の問題となる。モリブデン cofactor (Moco)はモリブドプテリンにモリブデン原子が共有結合した分子であり、これは硝酸還元酵素(NR)など幾つかの酵素の補酵素である。モリブデン欠乏環境下ではMocoの含有量が低下することが報告されており、土壌からのモリブデン吸収能が窒素代謝に影響を及ぼすことが示唆されている。Mocoの生合成経路は明らかにされているが、モリブデンの吸収と輸送に関するメカニズムは未だ不明である。発表者らは、シロイヌナズナのホウ素栄養に関する変異体を解析する過程において、葉におけるモリブデン濃度はCol-0とLerで数倍の違いがあることを見いだした。遺伝解析によって、この性質は単一の遺伝子座によって支配されていることを見いだし、Map based cloningによって原因となる遺伝子を同定した。同定された遺伝子は膜タンパク質であり、既知の無機イオントランスポーターと相同性を示した。酵母で発現させると、菌体内のモリブデン濃度を上昇させる効果が認められた。また、当該遺伝子にT-DNAの挿入を持つ変異株では葉におけるモリブデン濃度が低下していた。以上の結果を総合すると、今回の遺伝子の同定は植物におけるモリブデントランスポーターの初めての同定であると考えられる。
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© 2005 日本植物生理学会
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