抄録
カボチャ篩管タンパク質CmPP16は、一本鎖RNA結合タンパク質であり、篩部特異的に局在する。CmPP16は長距離移行能を有することから、篩管全身性情報伝達に何らかの役割を担っていることが示唆されている。我々の最近の研究により、CmPP16の2つのアイソフォーム、CmPP16-1とCmPP16-2は、全篩管タンパク質中では長距離移行の結果としてそれぞれシュートとルートを主な目的地としていることが明らかとなった。CmPP16-1は精製標品を用いると根への移行効率が低下することから、篩管タンパク質中にCmPP16-1の長距離移行制御因子が存在することが強く示唆された。そこでゲルろ過クロマトグラフィーと抗CmPP16-1抗体を用いた免疫共沈降法によりCmPP16-1と相互作用するカボチャ篩管タンパク質を探索したところ、CmPP16-1と相互作用するいくつかの篩管タンパク質が見いだされた。これらの相互作用タンパク質の共存下で精製CmPP16-1の根への長距離移行が回復することから、相互作用タンパク質のCmPP16-1目的地決定への関与が示された。さらにいくつかの相互作用タンパク質の同定を試み、eIF5Aや、TCTP類似21kDaタンパク質が含まれる事が判明した。以上の事から篩管タンパク質は、篩管液による受動的輸送のみならず、分子レベルで制御された選択的移行をしていることが示唆される。