抄録
我々は、タバコ培養細胞のゴルジ装置に存在するTypeII膜タンパク質であるプロリルヒドロキシラーゼ(PH)の機能と局在の解析を行っている。これまでに、細胞質側N-末端領域に存在するKSRGR配列中の塩基性アミノ酸を総て非電荷アミノ酸に置換したQSTGT変異体は小胞体に局在することから、この配列中の塩基性アミノ酸残基が輸送に重要な役割を果たすことを報告してきた. そこで今回、このタンパク質をモデルとして、塩基性アミノ酸残基のどのような性質が輸送に関わっているかを検討した。まず、KSRGR配列中の塩基性アミノ酸のうち1乃至2残基を上記変異と同じ非電荷アミノ酸残基に置換した変異体とGFPの融合タンパク質をタバコ培養細胞BY-2株で発現させたところ、2個の塩基性アミノ酸残基が1残基のアミノ酸を隔てて存在する場合には効率良くゴルジ装置へと輸送されるが、塩基性アミノ酸残基が1個の場合や、3アミノ酸残基により隔てられている場合には、ゴルジ装置への輸送の一部が阻害されていることを見出した。そこで、2個の塩基性アミノ酸残基の間隔を変えた変異体を作製し、それらの輸送を解析し、2個の塩基性アミノ酸残基の間のアミノ酸残基数が0、1、2の場合にはゴルジ装置への輸送効率の低下はおこらないという結果を得た。これらの結果をもとに、PH以外のTypeII膜タンパク質の小胞体からの輸送についても議論する。