抄録
植物細胞には、動物や酵母と共通なオルガネラと共に、プラスチド等の植物固有のオルガネラが存在するが、未だに細胞内には機能が明らかになっていない構造体や、分子マーカーまでも見いだされていない構造体が各種存在している。近年、分子生物学的解析と蛍光タンパク質や蛍光色素の利用により、エンドソーム等の概念が提唱されるようになってきており、これらの機能概念と構造を結びつける解析が待たれるところである。そこで本研究では、未分化細胞のモデルとして考えられるタバコ培養細胞BY-2株について、EST解析から得られた情報用いて抗体を作製し、それら抗体の認識するタンパク質の局在を解析することにより、未同定の植物オルガネラの同定を試みた。動物や酵母の研究から、各種のオルガネラ膜のマーカーとなることが期待されるグループを候補とし、ESTとマイクロアレイの解析データから、通常のBY-2 細胞で発現している複数の膜タンパク質ホモログを選抜した。次いで、これらタンパク質に対するポリクローナル抗体を作製した。得られた抗体を用いて、BY-2由来の膜画分に対する免疫ブロッテイングおよび蛍光顕微鏡法と免疫電子顕微鏡法により細胞内局在の解析を行った。その結果、既知のオルガネラとは異なる構造体に局在すると考えられる複数のタンパク質を見出した。