抄録
液胞膜Na+/H+アンチポーターは、液胞膜を介したpH勾配をエネルギー源として利用し、細胞質に存在するNa+やK+を液胞内に輸送する対向輸送体である。当研究室では、イネの液胞膜Na+/H+アンチポーター(OsNHX1)が、イネの耐塩性や鉄欠乏耐性に関与することを報告してきた。今回、OsNHX1のプロモーター領域とGUSレポーター遺伝子を用いた組織化学的解析を行った。その結果、根では中心柱や側根基部、葉では孔辺細胞や維管束で発現が高かった。また、レトロトランスポゾンTos17の挿入によるOsNHX1の遺伝子破壊系統を選抜し、その表現型を解析した。破壊系統のカルス及び植物体について塩ストレスや浸透圧ストレス処理を行ったが、野生型との間で生育に差は見られなかった。また、カルスに存在する主要な元素を解析したが、野生型との間で顕著な差は見られず、植物体に存在するK+及びNa+についても差は見られなかった。本発表では、破壊系統における他のNHXタイプ遺伝子の発現の解析結果と併せ、OsNHX1の生理的役割について考察する。