抄録
シロイヌナズナのAtMID1A遺伝子産物(AtMid1A)はCa2+透過性伸展活性化陽イオンチャネル活性をもつことを前回の本学会で発表した。そのデータから、AtMid1Aは機械刺激のセンサーとしてはたらき、細胞内にCa2+シグナルを発生させることに関与するものと考えられる。我々はシロイヌナズナゲノム上にAtMID1AのホモログであるAtMID1Bを発見した。両者はアミノ酸レベルで73%の相同性をもち、類似した疎水性プロファイルを示した。よってAtMid1BもAtMid1Aと同様に伸展活性化陽イオンチャネルの機能をもつと予 想される。本研究では、両タンパク質の植物体における機能を解析するため、両遺伝子にT-DNAの挿入が起こったシロイヌナズナの二重欠損株を作製し、その表現型を解析した。得られたatmid1a/b二重欠損株は、通常の育成条件下で生育に1~2日程度の遅れを示した。また、この二重欠損株の生育は、高濃度のMgSO4またはMgCl2を含む培地で野生型株の生育よりも著しく抑制された。この表現型はMg含有培地中にCaCl2を添加することにより緩和された。Mg2+は天然のCa2+チャネルブロッカーとして知られる。これらの結果から、AtMID1AとAtMID1Bの欠損が細胞内へのCa2+の流入の減少をもたらし、植物体におけるカルシウム欠乏を引き起こしていることが示唆された。