抄録
シロイヌナズナは35種の水チャネルをもつ。これらは、PIP(細胞膜), TIP(液胞膜), NIP, SIPの4つのグループに分けられる。本研究では、この中で知見の乏しいSIP(SIP1-1, SIP1-2, SIP2-1)に焦点をあてた。3種のSIPそれぞれをGFP遺伝子と融合させてシロイヌナズナの培養細胞(東大梅田正明先生ご提供)から調製したプロトプラストに,PEG法により一過的に発現させるとER局在を示す明瞭な蛍光シグナルが観察された。また、シロイヌナズナの茎から粗膜画分を調製してショ糖密度勾配により分画し、イムノブロットを行ったところ、SIPはERマーカーと同じパターンを示した。したがって3種のSIPはいずれもER局在と判断される。さらに,SIPを酵母で発現させ、膜画分を調製してストップトフロー光散乱法によって水輸送活性を測定したところ、SIPは水透過能をほとんど示さなかった。また,SIPのpromoter-GUS解析ではSIPが組織特異的に発現していることが分かった。SIPはERに局在し、緩やかな水透過、あるいは他の基質の輸送を通してERの恒常性維持に関与しているのかもしれない。