抄録
シロイヌナズナのDREB2Aタンパク質は、乾燥、塩ストレス応答に関与する転写因子であり、ストレス誘導性遺伝子のプロモーター領域に存在するDRE/CRT配列に特異的に結合する。しかしながら、DREB2Aをシロイヌナズナで過剰発現させてもターゲット遺伝子の発現はほとんど変化せず、DREB2Aタンパク質の活性化には翻訳後の修飾が必要であると考えられる。我々はこれまでにDREB2Aタンパク質の詳細なドメイン解析を行い、アミノ酸136-165の領域が活性を負に調節していること、この領域を削除することで恒常的活性型となる事を明らかにした。この活性型DREB2Aを、35Sプロモーターと結合して過剰発現させたシロイヌナズナの解析を行った。この過剰発現植物では、生育の遅れと乾燥耐性の向上がみられた。活性型DREB2A過剰発現植物では水ストレス誘導性遺伝子の発現が、ストレスのない状態でも発現していることが確認された。低温応答に関与し、同じシス配列を認識する転写因子DREB1Aの過剰発現植物の解析結果と比較したところ、それぞれのターゲット遺伝子は、一部は一致していたが異なった遺伝子も見られた。それぞれのタンパク質に特異的なターゲット遺伝子のプロモーター領域を比較し、認識するシス及び周辺配列の解析を行った。一方、ストレス誘導性プロモーターにより活性型DREB2Aの発現を制御しシロイヌナズナ中で過剰発現させたところ、ほとんど生育の遅れは見られず、乾燥耐性が向上した。