抄録
アズキ芽生えを冠水条件下で生育させると、細胞の浸透濃度が低下し、上胚軸の伸長成長が抑制される (2003 年度日本植物学会大会)。このような浸透濃度の低下は主に糖およびアミノ酸の減少によって引き起こされることから、種子から上胚軸に転流されるこれら有機物質の取り込み過程が冠水によって影響されるものと考えられる。そこで本研究では、これらの過程に関与している細胞壁結合型インベルターゼ並びにプロトン共輸送活性に対する冠水の影響について検討した。まず細胞壁結合型インベルターゼ活性を測定したところ、冠水と対照の間には有意な差が見られず、冠水条件下での糖の取り込み減少には、インベルターゼは寄与していないと考えられた。次に、上胚軸のアポプラスト液のプロトン濃度を測定したところ、対照に比べて冠水処理によって明らかに低下した (対照: 1.41 μM、冠水: 0.65 μM)。また、冠水処理した細胞内のATPの量は対照の約半分程度に減少していた。したがって、冠水条件下では、アズキ上胚軸細胞内のATP量が減少することによってプロトンポンプ活性が低下する可能性が高い。このプロトンポンプの活性の低下により、プロトン共輸送の駆動力が減少し、細胞内への糖およびアミノ酸の取り込み量が減少して、細胞の浸透濃度が低下すると考えられる。