2016 年 67 巻 4 号 p. 482-495
沖縄は地域を研究する社会学的研究にとって見過ごすことができない2つの特徴をもっている. 1つは, そこはながらく独立国であって, 日本併合に対する不信が存在する. それは政治的イデオロギーを超えて, 小さな村の住民にも, 「沖縄世」への憧れとして存在している. それが現在の米軍基地反対につながっている.
もう1つは日本民俗学を中心にした南島研究の研究者たちが沖縄を日本の原郷として位置づけ, 膨大な資料を蓄積し, 数多くの注目すべき論文を発表しつづけてきた. それは日本民俗学の巨人, 柳田国男と折口信夫が沖縄研究に多くの労力を割いたことが大きい.
このような事実をふまえて, 社会学が沖縄にどのような貢献をし, どのような限界をもたざるをえなかったのかを本稿では示した. 基本的には, 社会学を狭義に位置づけて, 歴史的・政治的課題および南島論に示された文化的課題をとりあげないようにしたこと. そのように自己の課題を狭めたことによって, かろうじて社会学を成立させてきた経緯がある.