抄録
我々は,光合成を行わない植物における光シグナル伝達経路が,光合成植物のものとどの程度異なっているかを明らかにすることで,植物の光シグナル伝達に関して新しい知見を得ることを目的として研究を行っている.これまでに,全寄生植物ヤセウツボよりフィトクロムA (PHYA) 相同遺伝子 (OmPHYA) を単離し,この遺伝子のコードするタンパク質中に光合成植物で高度に保存されている 26 アミノ酸の置換を見いだしている.これらの置換にも関わらず,OmphyA は遠赤色光 (FR) によって細胞質より核に移行することを明らかにした.そこで,OmphyA が光シグナル伝達経路の下流に位置する遺伝子の発現を誘導出来るかどうかを,シロイヌナズナの phyA 欠損変異体 phyA-211 株より調製したプロトプラスト中で OmphyA を一過性発現させることで調べた.phyA によって発現調節を受ける転写因子として HY5, CCA1, LHY, RPT2, および CO, また,光合成に関連する遺伝子として FtsH, Lhcb2, MgCh, および PSY についてそれぞれの発現量を real-time RT-PCR により相対定量したところ,FR 連続照射条件で OmphyA は HY5 および CO を除く遺伝子の発現を誘導出来なかった.