抄録
我々はこれまでにシロイヌナズナのH2O2誘導性グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子へのT-DNA挿入が重力応答を鈍化させることを見出した(潮見ら、日本植物生理学会2004年大会要旨)。また、オーキシン結合タンパクとして知られるオーキシン誘導性GSTの遺伝子へのT-DNA挿入についても同様の傾向が見られたことから、2つのGST遺伝子が重力応答システムに関与することが示唆された。重力応答にGSTの基質であるGSHが関与するかを調べるために、内生GSH量を上昇させる処理をした。野生型植物では処理による差は認められないのに対して、T-DNA挿入植物では重力方向への根の伸長が乱れた。また、GSH添加培地において野生型植物の重力応答はGSH濃度依存的に鈍化した。これに対して、T-DNA挿入植物では、重力を感受するようになった。以上のことから、根にはGSTとGSHを介した重力応答システムが存在することが示唆される。