抄録
これまでに我々は、細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(cAPX)活性を約50%に抑制したタバコBY-2細胞において、細胞内酸化レベルの恒常的な上昇と熱や塩などの環境ストレスに対する耐性能の強化を明らかにしてきた。これは、cAPX発現抑制細胞が植物レドックス応答解析の良いモデル実験系となることを示唆していた。今回、レドックスによるストレス耐性能強化の要因を分子レベルで検討するため、cAPX発現抑制細胞におけるレドックス応答性キナーゼの存在とレドックス応答遺伝子の探索を試みた。レドックス応答性キナーゼの存在を、ミエリン塩基性タンパク質を基質としたゲル内アッセイ法により検討した。その結果、cAPX発現抑制BY-2細胞において、分子量約36 kDaおよび46kDaの活性化キナーゼの存在が確認された。これらのキナーゼは、40 mM N-アセチルシステイン処理により不活化すること、10 mM H2O2処理をした非形質転換細胞でも活性化が認められることから、レドックス応答性キナーゼであることが示唆された。サブトラクション法による発現遺伝子探索の結果、cAPX発現抑制細胞において、熱や塩ストレス応答に関与するHSP70、DnaJ様タンパク質、フォスファターゼを含めた7種類の遺伝子を同定した。これらの遺伝子は、H2O2処理をした野生型BY-2細胞においても顕著に発現上昇することが碓認された。