抄録
葉緑体内のアスコルビン酸(AsA)は光合成で生じる活性酸素種の消去に中心的な役割を果たす。幾重にも張られた葉緑体内AsA還元再生系のうち、デヒドロアスコルビン酸還元酵素(DHAR)のAsA再生に対する寄与を検討した。
イネ細胞質型DHARにホウレンソウ葉緑体型CuZn-SODのトランジットペプチドを融合させた遺伝子を作成しタバコに導入した。これと葉緑体型DHAR遺伝子に挿入変異の入ったシロイヌナズナ(Salk066273)を用い、種々の測定を行った。葉緑体にDHARを導入したタバコは選抜段階で連続照射すると、シュートを形成したが発根せず全て枯死したが、昼夜サイクルにすることでDHARをドライブするための還元力を制限すると発根した。逆に葉緑体DHAR破壊株は野生株に比べ昼夜サイクルで野生型株col-0に比べ根長の増大を認めた。DHARの発現レベルはリーフディスクでのパラコート耐性には影響を与えず、また葉中AsA量および還元体比率は殆ど影響を受けなかった。ただし葉緑体DHAR破壊株はcol-0の成長が著しく阻害される100mM NaCl存在下でも良好な生育を認めた。以上の結果から、DHARは活性酸素消去に伴って生じた酸化型AsAの再生には殆ど寄与しないが、葉緑体内のレドックスバランスを通じてストレス応答や成長制御に影響を与えるものと考えられる。