抄録
Gloeobacter violaceusはチラコイド膜を持たないなど始原的な性質を残したシアノバクテリアで、その始原性ゆえにゲノム配列が決定された。シアノバクテリアの光化学系Iは高度に保存された11個のサブユニットからなるが、G. violaceusはpsaI、psaJ、psaKを欠くことが報告されていた。これらのサブユニットの欠落は、機能的欠陥や他のサブユニットの代替の可能性などを示唆する。そこで我々はG. violaceusの光化学系Iを精製し、そのサブユニット構成を解析した。その結果、ゲノム配列から推測されていた8個のサブユニットを同定し、PsaI、PsaJ、PsaKの欠落を確認した。また、35アミノ酸残基からなる1個の新奇なサブユニットを見いだした。それは既知の配列と有意な相同性を示さないのでG. violaceusに特異的なものと考えられ、我々はPsaZと名付けた。対応する遺伝子は新奇なORFであり、それをgsr5001とした。さらに我々はpsaBのC末端側に、塩基配列上155アミノ酸残基の伸長配列が存在することを見いだし、PsaBでその配列が発現していることを示した。これは真正細菌のペプチドグリカン結合配列と有意な相同性を持ち、G. violaceusの光化学系Iはペプチドグリカン結合能を持つと推測された。この結果は光化学系のサブユニットに機能的ドメインが付加している初めての事例である。これらの結果を基に、G. violaceusの光化学系Iの特異性を考察する。