抄録
極低温での光化学系II(PS II)色素系内部のエネルギー移動過程を植物PS II標品とフィコビリンを合成できないSynechocystis sp. PCC 6803変異株(PAL)で検討した。PS IIの定常蛍光スペクトルは、77 Kまでの冷却ではピークが長波長シフトし、F685とF695の蛍光バンドが顕著になる。しかし、さらに冷却するとピークは77Kの695 nmから5 Kでは692 nmに短波長シフトする。 昨年我々は、この原因を知るためにホウレンソウPS IIの時間分解蛍光を5 - 77 Kで測定し、F685、F695の他に689 nmにピークをもつ新しい蛍光成分(F689)を発見した。F689の減衰速度の温度依存性からスペクトル変化がF689の蛍光強度の増減で説明できることを示し、LHC IIからF689、F695へ至る2つの励起エネルギー移動経路を提案した。
今回は、この現象の普遍性を探るためシアノバクテリアでの解析をおこなった。フィコビリン蛍光による困難をさけるため、PAL細胞を用いて同様の解析を行い、シアノバクテリアにもF689が存在し、F685からF695へのエネルギー移動速度とF689、F695の減衰がホウレンソウよりも速いことを明らかにした。
これらの結果に基づいて極低温でのエネルギー移動過程のシミュレーションを行い、高等植物とシアノバクテリアのPS IIにおける光捕獲のメカニズムを考察した。