抄録
ゼンマイ緑色胞子の葉緑体には,膜に強く結合している24-kDaタンパク,ゆるく結合している22-kDaタンパクなどが,多量に存在している。これらのタンパクは胞子が吸水し発芽が始まると消失することから推察して,これらは乾燥状態において葉緑体を安定化するものと予想している。このうち,22-kDaについては,その全アミノ酸配列が明らかになり,LEA3ホモログらしいことが分かっている。今回,22-kDaタンパクの性質を明らかにする一環として,このタンパクを大腸菌で発現させ,その性質を調べることを計画した。このタンパクの等電点は非常に高く,形質転換した菌を長期間生育させることは困難であり,乾燥耐性の実験はできなかった。そこで,22-kDaタンパクと比較的高い相同性がみられるDeinococcus radioduransにおいては放射線耐性だけでなく乾燥耐性も備えていることにヒントを得て,UV耐性に及ぼす効果を調べた。22-kDa成熟タンパクをコードしているcDNAにヒスチジンFLAGを付けたものを,発現用プラスミドpRSET-Aに組み込み,それを発現用大腸菌BL21(DE3)pLysSにエレクトロポレーションにより導入した。ウエスタン分析の結果,形質転換細胞はIPTGの有無に拘わらず蛋白を作っており,それらは形質転換していない細胞と比較してUV耐性が向上した。