抄録
植物のソース・シンクバランスの変化による光合成速度の制御の機構を明らかにすることは重要である。明期10時間、暗期14時間の標準生育条件下でダイズ植物個体を生育させ、葉が十分に展開した後、半分の植物個体をシンク・リミット状態にするために、3日間の連続明期処理を施した。処理植物の350ppmにおける葉(第4葉)の単位面積当たりの光合成速度は、3日間標準生育条件下に置かれたコントロール植物の約半分に低下した。処理植物の葉のショ糖、デンプン含量はコントロール植物と比べ顕著に増加した。葉の細胞間隙CO2濃度、葉の単位面積当たりの含水量、クロロフィル量、可溶性タンパク量、ルビスコタンパク量は、コントロール植物と処理植物の間でほとんど違いが認められなかった。葉の抽出液を用いてルビスコ活性とルビスコに結合したRuBPの量を解析した結果、処理によってルビスコ活性が低下し、ルビスコに結合したRuBPの量が増加することが認められた。処理植物とコントロール植物の葉の光合成速度の差は、測定時のCO2濃度が高いとき、かなり小さくなることが認められた。