抄録
イネ(Oryza sativa L. 品種・日本晴)の硝酸トランスポーター遺伝子NRT2をイネゲノムデータベースより4つ抽出した。NRT2.1とNRT2.2は同じORFを持っているが、それぞれのUTRの塩基配列は異なる。NRT2.3とNRT2.4は アミノ酸レベルで46.3%の相同性を示した。本研究ではNRT2sと硝酸吸収との関連性を明らかにするため、これらの遺伝子の発現解析を行った。
脱塩水で3週間育てたイネをCaSO4溶液(N-free前処理)あるいは同溶液に (NH4)2SO4を加えた溶液(NH4+前処理)で20時間前処理した後、KNO3溶液に浸漬し経時的なNRT2s発現をRT-PCR法で解析した。その結果、NRT2.1は硝酸により発現が誘導されること、NH4+前処理により発現誘導時間が遅れることが認められた。NRT2.2は硝酸によって誘導されたが、NH4+前処理による発現抑制は認められなかった。NRT2.3は構成的に発現し、前処理に関係なくほぼ一定の発現量を示した。NRT2.4の発現はNRT2.1と同様の傾向を示したが発現量は少なく、その発現量は時間経過とNH4+前処理によって低下した。
イネには硝酸吸収開始までに硝酸処理から1時間のタイムラグが認められた。さらに、その硝酸吸収をNH4+前処理とN-free前処理の場合と比較したところ、硝酸吸収の開始時間に約1~2時間の遅れが認められた。この結果はNRT2.1の発現パターンと似ており、NRT2.1が根からの硝酸吸収の重要な役割を担っていることが示唆された。