日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ネナシカズラの寄生根の誘導にはサイトカイニンのde novo合成が必要か?
小林 智美若杉 達也古橋 勝久*山田 恭司
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p. 694

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抄録
 寄生植物ネナシカズラにおける寄生根の分化は、物理的刺激 (遠赤色光 (FR) +接触 (C)) あるいはサイトカイニン (CK) 処理によって人為的に誘導できる。我々は、CKの第一次応答遺伝子であるレスポンスレギュレーター (CjRR) 遺伝子群の発現パターンの解析結果から、FR+Cの刺激が内生CKレベルの上昇を引き起こすというシグナル伝達経路を考えている (植物生理学会, 2004年)。本研究では、寄生根誘導過程における内生CKの濃度上昇のしくみを検討するために、(1) ネナシカズラからCK合成酵素 (CjIPT) 遺伝子のcDNAをクローン化して寄生根誘導過程における発現パターンを調べた。また、(2) タンパク質合成を阻害し、CjRR遺伝子の発現挙動を調べた。
 (1) CjIPT遺伝子の転写は、CjRR遺伝子の発現誘導がFR照射後2時間以内に始まるにもかかわらず、FR照射後少なくとも12時間目までは検出できなかった。このことから、CjRR遺伝子の発現に先立つはずのCKの濃度上昇には、少なくとも今回単離したCjIPT遺伝子は関与していないことが判明した。(2) シクロヘキシミドによる処理 (100μM, 3時間) の直後にFR照射を受けたネナシカズラにおいてもCjRR遺伝子の発現は誘導されることが明らかになった。以上の結果は、ネナシカズラの寄生根誘導過程で起きるレスポンスレギュレーター遺伝子の発現誘導に必要となるCKレベルの上昇が、de novo合成以外の経路によるという可能性が高いことを示唆している。
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© 2005 日本植物生理学会
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