抄録
微小管機能は、植物の形態形成に必要不可欠である。シロイヌナズナのmicrotubule organization 1-1(mor1-1)変異体では、表層微小管配向が温度依存的に乱れる事が知られている。MOR1はXMAP215ファミリーに属する微小管結合蛋白質である。mor1-1ではN末端領域にアミノ酸置換変異(L174F)が存在する1。花粉において細胞板形成異常を示すgemini1変異体がMOR1の新しいアレルである事が判明し、本因子のフラグモプラスト形成への関与が示唆された2。本研究ではmor1-1における根の細胞分裂過程を解析した。顕著な異常は紡錘体とフラグモプラストに認められ、それらの長さ/幅は野生型と比べて短かった。細胞板もまたgemini1と同様に異常な形態を示した。MOR1の局在を蛍光抗体染色法で解析したところ、微小管の全長にわたり細胞周期を通して存在する事が明らかになった。その微小管との共局在は、制限温度条件下で微小管配向が乱れた状態でも保たれた。本解析により、微小管結合能とは無関係に、mor1-1変異体において細胞分裂過程に異常がある事が示された。
1. Whittington et al. (2001) Nature, 411
2. Twell et al. (2002) Nature Cell Biology, 4