抄録
アクチン繊維は植物細胞の分裂や形態形成に重要な役割を果たしている。しかし、従来の細胞固定を伴う観察法ではアクチン繊維が変形し、本来の姿を捉えていない可能性が指摘されていた。そこで、生細胞におけるアクチン繊維の動態を解析するため、GFPとシロイヌナズナのアクチン結合タンパク質の一つであるAtFim1のアクチン結合領域との融合コンストラクトを作成し、35Sプロモーターにより恒常的に発現するタバコBY-2の形質転換細胞を作出した。我々は最も観察に適した細胞株を選抜しBY-GF11(BY-2 cells stably expressing GFP-Fimbrin line 11)と名付けた。BY-GF11をローダミン・ファロイジンにより染色したところGFP蛍光と良く一致し、GFP-Fimbrin融合タンパク質はアクチン繊維を特異的に標識していた。次に、細胞周期を通じてアクチン繊維の構造変化を生体観察した結果、表層繊維やフラグモプラストなどこれまでに知られているアクチン繊維構造とよく一致する構造が確認された。一方、細胞質糸においては細胞質中を貫くというよりはむしろ細胞質糸を縁どるような分布が観察された。このようなアクチン繊維は膜構造と密接に関係している可能性があり、細胞固定を要しない本研究の手法によりはじめて観察が可能になったと考えられる。生細胞におけるアクチン繊維の動態とその意義について議論したい。