抄録
ホウ素(B)は高等植物の微量必須元素であり、その欠乏は成長や形態形成に著しい影響を及ぼす。演者はこれまでに低ホウ素条件下(5 μM)で成長可能なギンドロ培養細胞系(1/20-B) を確立し、B欠乏耐性機構について研究を行ってきた。その結果、1/20-B細胞のペクチンメチルエステラーゼ(PME)活性は十分なホウ素存在下(100 μ)で培養した細胞(1/1-B)よりも上昇しており、活性の上昇がB欠乏耐性に関与している可能性が示唆された。また、1/20-B細胞を100 μMのホウ素を含む培地に移植するとPME活性が低下することから活性の上昇は培地中のB濃度によって調節されていると考えられた。
今回、演者はPME遺伝子の発現機構を明らかにし、ホウ素欠乏耐性との関連を調べるためにPME遺伝子のクローニングを試みた。1/1-B細胞、及び1/20-B細胞から調製したmRNAから逆転写反応により1本鎖cDNAを合成した。このcDNAをテンプレートとし、ポプラPMEの塩基配列情報から合成したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPMEをコードする部分長cDNAをPCRによって増幅した。得られたcDNAをプラスミドベクターにサブクローニングし、塩基配列を解析したところ両細胞から得られたクローンは同一の塩基配列を示し、ポプラのpme1遺伝子と高い相同性を持つことが明らかになった。