抄録
植物の道管は、水や塩類に加えて様々なシグナル分子を輸送する役割があり、成長段階や器官に応じて、環状、らせん状、網目状などの様々な紋様の二次細胞壁をもつ管状要素から構築されている。しかしながら、これら道管の二次細胞壁の形成に関わる分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。
ヒャクニチソウ単細胞分化系では葉肉細胞から同調的に管状要素を分化させることができる。これまでにこの分化過程におけるマイクロアレイ解析により、管状要素分化特異的に発現する遺伝子群を明らかにすることが出来た。これら管状要素分化遺伝子群の中には、細胞壁形成に関わると考えられるβ-xylosidase、β-galactosidase、β-glucosidaseなどのGlycoside hydrolase (GH) family遺伝子が多数含まれており、本研究では、これらGH family遺伝子の発現と機能を詳細に解析した。
まず、管状要素分化特異的に発現するヒャクニチソウ遺伝子に類似した配列を持つ28のシロイヌナズナ遺伝子を選択した。これらGH family遺伝子の根における発現様式をYFPレポーターを用いたプロモーター解析により調べたところ、9つのシロイヌナズナ遺伝子が道管分化特異的に発現することが明らかとなった。さらに、これらGH family遺伝子へのT-DNA挿入による道管分化への影響と個体全体の生育への影響を詳細に観察したので、この結果についても報告する。