抄録
イネやオオムギ等で古くから知られる一群の変異体「カマイラズ:鎌要らず」はその名の通り、桿が簡単に折れてしまう。この表現型は幼苗では識別が困難で、成熟した桿で顕著な事から、原因遺伝子はセルロース合成そのものよりもこれまでほとんど解明されていない厚膜組織等2次細胞壁構築の調節・繊維構造の構築等に関与していると考えられ、その実体の同定が永らく望まれていた。我々は今回、ポジショナルクローニングにより第2染色体の長腕部にある原因遺伝子BC3 (brittle culm 3) を同定することができたので報告する。bc3変異体は桿でのセルロース含量が約3/4に減少しているがその他の糖成分に顕著な変化は認められず、短根・やや矮性等の表現型を示し、リグニンによる補償が認められない等bc1変異体とは異なる特徴を示す。japonicaの変異系統M11(bc3領域は農林8号由来、他の領域は台中65号を背景に持つ)とindica 品種Kasalathとの交配によるF2, F3世代の劣性ホモ個体697の分析により、bc3を94kbの範囲に絞り込んだ。この領域を我々が開発した大容量バイナリーベクターpBIGRZに約20-30kbごとに断片化したものを導入して相補性検定を行うことにより、BC3はこれまで細胞壁合成への関与が知られていない重要な機能familyを形成する遺伝子の一員と同定された。真核生物全体にわたるfamily遺伝子群の機能からBC3遺伝子の細胞壁構築での役割を推察する。