抄録
オーキシン応答性遺伝子発現を制御する転写因子であるARFと相互作用して、その活性を調節すると考えられているAux/IAA遺伝子族は、7遺伝子座で優性突然変異が知られている。これらの変異体ではオーキシンが関与する様々な生理現象に共通に異常がみられる一方で、それぞれの変異体は個別の特徴を示し明確に区別することができる。このことは、Aux/IAA遺伝子族間で機能分化が行われていることを示唆するが、酵母 two-hybrid 系で比較してもARFとAux/IAAタンパク間の特異的な相互作用は観察されず、機能分化の機構は不明であった。そこで、msg2/iaa19とaxr2/iaa7の優性突然変異型cDNAを利用して、それぞれをIAA19と7遺伝子のプロモーターの制御下で発現させ、その表現型を比較した。msg2/iaa19をIAA19プロモーターの制御下で発現させると、暗所芽生えのmsg2の屈性異常が再現されたが、IAA7プロモーターの制御下では屈性異常はみられたものの、axr2で見られる成熟個体や暗所芽生えでの矮化は示さなかった。一方、axr2/iaa7をIAA7プロモーターの制御下で発現したときはaxr2と同様の矮性を示したが、IAA19プロモーターでは、形態、屈性共に異常はみられなかった。これらの結果は、優性変異を持つIAA遺伝子の間で、タンパクの性質に違いがある事を示唆する。