抄録
葉緑体は細胞内でphototropin 1, 2に依存した光定位運動を示す。我々はGFP-talinによりアクチンを可視化したシロイヌナズナ葉柄細胞を用いて、光運動反応に伴うアクチン構造の動態を調べた結果、葉緑体表面には特徴的な短いアクチンフィラメントが存在すること、また、強光照射による逃避運動に際して、これが葉緑体上で進行方向前端に局在し、このアクチン局在化により運動が生じることを示した(門田ら、植物生理学会2006)。
本研究では弱光の微光束照射により誘導した集合反応時にもこのアクチン局在化が生じるかどうか調べた。弱光微光束による細胞部分照射により葉緑体の集合反応を誘導し、同時にアクチンの動態を蛍光観察により調べた。微光束照射開始後、葉緑体は一時的に運動速度を上昇し微光束に向かって集合運動を示すが、この運動時にも葉緑体の進行方向前端にアクチンの局在化が生じることがわかった。そこで、運動している葉緑体の前半分、後半分の蛍光強度を測定し、両者の差と微光束方向への運動速度との関係を調べたところ、両者に明確な相関関係が認められることがわかった。これらの結果は、弱光による集合運動も強光による逃避運動と同様に葉緑体上のアクチン局在化に依存した共通の運動メカニズムによって調節されていることを示している。