抄録
テロメアは真核生物の染色体末端にある特殊な構造で、染色体の安定化に関与しているが、末端複製問題によって細胞分裂のたび短縮する運命にある。この問題を解決するため、テロメアDNA配列を合成する逆転写酵素の一種であるテロメラーゼが知られている。テロメラーゼは植物細胞が持つ無限分裂能や組織の分化に深く関連していると考えられるが、その活性調節に関する研究は少ない。本研究では、植物におけるテロメラーゼの調節機構を明らかにすることを目的とし、オーキシン処理後2日という極めて早いカルス形成が誘導されるヤエナリを用いて、オーキシンによるカルス形成誘導時のテロメラーゼ活性、及びその遺伝子の発現を調査した。既知の植物TERT(telomerase reverse transcriptase)のアミノ酸配列を参考にして、テロメラーゼ保存領域B,C,D,Eを有するヤエナリのVrTERTの部分cDNA配列を新たに決定した。テロメラーゼ活性とVrTERT発現を調査したところ、テロメラーゼ活性が誘導されたのは、カルス形成よりも早いオーキシン処理後12時間後だったのに対して、VrTERT発現は1時間後に見られた。VrTERT遺伝子が発現してから、テロメラーゼ活性が誘導されるまで10時間以上もの時間的差が見られることから、VrTERT遺伝子発現後、テロメラーゼ活性が誘導される間に複雑な調節機構が存在することが推測される。