抄録
アブシジン酸(ABA)は種子の成熟から植物体の乾燥や塩ストレスへの応答やその耐性の獲得まで、多岐にわたって働くことが知られている。しかし、ABA情報伝達経路およびその制御機構については未だ不明な点が多い。本研究ではABA情報伝達経路の解明を目的とし、遺伝学的手法によるABA関連突然変異体の単離を試みた。分子シャペロンであるHSP90がArabidopsisやDrosophilaにおいて遺伝的多様性の緩和に働くことが示されている。そこで、HSP90の働きを阻害することにより表現型として現れる変異があると考え、HSP90阻害剤存在下でABA関連突然変異体のスクリーニングを行った。その結果、HSP90阻害剤に依存的な変異体を得る事はできなかったが、新奇のABA非感受性変異体候補abi101を得た。abi101は劣性の弱いABA非感受性で、興味深い事にabi101はABA感受性変異体abi5とsynergistic heterozygocityの関係にあり、これらの変異は密接に関連していることが遺伝学的な解析から示された。このabi101変異体についての解析結果を報告する。