抄録
種子成熟・発芽期のアブシジン酸(ABA)応答性において重要な役割をもつ転写因子ABI3及びABI5の転写活性化機構について研究を行った。シロイヌナズナT87培養細胞のプロトプラストを用いた一過的発現実験から、レポーターとして複数のABREをもつrd29Bプロモーターや、複数のDREと1個のABREをもつrd29Aプロモーターを用いた場合、ABI3、ABI5、AREB1に転写活性化能が認められた。さらにABI3過剰発現シロイヌナズナでは、ABA処理を行わなくてもrd29Bの発現レベルが高いことが示された。しかし、ABI5過剰発現シロイヌナズナでは、ABA処理を行わない場合、rd29Bの発現レベルの上昇は認められず、ABI5による転写活性化には転写後の修飾が必要と考えられた。ABI5/AREBファミリーで保存されている領域のCDPK標的配列中3箇所のSer/Thr残基をAlaに置換したABI5は、一過的発現実験においてABAによるABREの転写活性化能が抑制された。また、ABI5断片はABAで活性化するSnRK2タイプのkinaseでリン酸化された。これらの結果は、ABI5のABAによる転写活性化にはSnRK2によるリン酸化が関わっていることを示唆する。