日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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低窒素条件下で生育したキュウリの窒素同化初期過程におけるアブシジン酸の役割
*岡 真理子Margarito Rodriguez Alvarez藤山 英保
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p. 760

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抄録
 演者らは、低窒素環境下で生育させた高等植物におけるアブシジン酸(ABA)の役割を研究している。これまでの研究により、低窒素条件でキュウリ植物にABAを処理すると葉が緑色を保つこと、その時、植物体内のアミノ酸やタンパク質含量が増加すること、さらに、低窒素条件下においてはABA含量が増加することを見出した。以上の事実は、ABAが低窒素条件下における植物の生存に重要な役割を果たしていることを示唆している。
 そこで、本研究においては、窒素代謝の初期過程におけるABAの役割を明らかにするために、低窒素条件下で生育させたキュウリ植物にABAを処理し、硝酸還元酵素および亜硝酸還元酵素活性を調べるとともに硝酸、亜硝酸、アンモニア含量を測定した。硝酸還元酵素活性は、ABA処理により、キュウリ植物の成長段階に関わらず、地上部、根において上昇した。一方、亜硝酸還元酵素の活性は、成長段階の進んだキュウリ植物においてABA処理により活性が上昇した。ABA処理した植物においては、ABA無処理の植物と比較していずれの器官においても硝酸含量が多く、地上部においては亜硝酸およびアンモニア含量も高い値を示した。以上の結果から、低窒素条件下において、ABAは硝酸還元酵素活性および亜硝酸還元酵素活性を高めてアミノ酸の原料となるアンモニアをより多く供給するとともに硝酸吸収を促進し、低窒素条件下における植物の長期生存を可能にしている可能性が考えられた。
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© 2005 日本植物生理学会
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