抄録
ブラシノステロイド(BR)の内生量が適正に保たれることは、植物が正常に生育するために不可欠である。これまでに私たちは、野生型シロイヌナズナの芽生えにBR生合成阻害剤ブラシナゾール(Brz)を与えると、BR生合成に関わる7種の遺伝子(FK、DWF5、DET2、DWF4、CPD、BR6ox1、ROT3)の発現が上昇すること、逆に、過剰のブラシノライド(BL)を与えると5種の生合成遺伝子(DWF7、DWF4、CPD、BR6ox1、ROT3)が発現低下し、1種の不活化遺伝子(BAS1)が発現上昇することを見出した。これまでの結果は、内生BR量の適正化がBR生合成の前駆体を供給するステロール合成からBR特異的生合成・不活化までの広範な代謝に関わる酵素遺伝子のフィードバック発現により達成されていることを示している。今回、BR非感受性変異体bri1中での上記遺伝子の発現を調べたところ、DWF4を除く全ての遺伝子はBrz又はBLに対する発現応答が完全に消失した。一方、DWF4はbri1変異体中でも野生型の3分の1程度の応答性を保持していた。以上の結果は、BR代謝遺伝子のフィードバック発現がBRの信号伝達に大きく依存していることを示している。また、BR生合成の律速反応に関わるDWF4の発現は、BRの信号伝達に依存した経路に加えて非依存な経路により調節されていると考えられた。