抄録
エンドリデュプリケーションは、M期での細胞分裂が起こらず、DNA含量を増大していく特殊な細胞周期である。この細胞周期は植物の形態形成に深く関与していることがこれまでに示されている。エンドリデュプリケーションの制御機構を明らかにするため、我々はシロイヌナズナのアクティベーションタグラインのスクリーニングにより、DNA含量が増大する変異株を複数単離した。そのうちの一つであるincreased polyploidy level in darkness 1-D (ipd1-D)と名付けた変異株は、暗所の芽生えにおいて、野生株に比べDNA含量の増加と胚軸の著しい伸長が見られた。しかし明所の芽生えでは、野生株との顕著な違いは見られなかった。ipd1-Dの原因遺伝子 (IPD1) は、CUE様ドメインを持つタンパク質 (IPD1) をコードしており、このドメインは植物特有であった。IPD1の光による制御機構を解明するため、単色光下でのDNA含量を測定したところ、青色光及び遠赤光によりipd1-DのDNA含量の増加が抑制された。またIPD1の発現は、芽生えの胚軸上部の細胞伸長が起こる部位で特に発現が見られた。以上のことから、IPD1はエンドリデュプリケーションによって起こる細胞伸長の正の制御因子であり、その機能は青色光及び遠赤色光で抑制されることが示された。