日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒメツリガネゴケにおけるペプチドグリカン合成系遺伝子の欠損による色素体分裂異常
*武智 克彰町田 真理子林田 明紘黒岩 晴子滝尾 進長谷部 光泰高野 博嘉
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p. 815

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抄録
  色素体の起源と考えられるシアノバクテリアの細胞壁成分であるペプチドグリカンは、UDP-N-アセチルグルコサミンから10種類の合成系遺伝子によって合成される。緑色植物の葉緑体にはペプチドグリカン層は見つからないが、我々はコケ植物ヒメツリガネゴケESTライブラリーから8種類の合成系遺伝子を見いだした。更にシロイヌナズナゲノム中においても4種類が保存されている。タンパク質輸送予測プログラムにより、見いだされた遺伝子の大部分に色素体移行配列の存在が示唆された。合成系遺伝子の一つMurE遺伝子は両植物に保存されているが、その破壊ラインの表現型は異なっていた。ヒメツリガネゴケでは野生型と比較し葉緑体数が減り巨大化した葉緑体や極小葉緑体が観察された。一方、シロイヌナズナでは淡黄色の植物体になりチラコイド膜の発育が途中で阻害されたような色素体が確認されたものの、顕著な色素体数の減少は認められなかった。また、βラクタム系抗生物質の標的となるペニシリン結合タンパク質(PBP)をコードする遺伝子はシロイヌナズナには存在せず、ヒメツリガネゴケにのみ認められた。シロイヌナズナではβラクタム系抗生物質処理をしても葉緑体に異常は見られないが、ヒメツリガネゴケではMurE破壊ラインと同様な巨大葉緑体と極小葉緑体が観察され、またPBP破壊ラインも同様の表現型を示した。現在MurE及びPBPの色素体内での局在部位の同定を進めている。
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© 2005 日本植物生理学会
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