抄録
シロイヌナズナのcrumpled leaf (crl)変異体ではプラスチド分裂、細胞分裂方向、細胞分化に異常が見られ、ほとんどすべての器官の形態が異常となる。また、crl変異体ではプラスチドへのタンパク質輸送が部分的に損なわれている事が示唆されている。現在我々はプラスチドの何らかの機能が葉緑体分裂、細胞分裂・分化に関与しており、crl変異体ではプラスチドへのタンパク質輸送が損なわれた結果、そのようなプラスチドの機能が影響を受けているという可能性を考えている。しかし、既知のプラスチドへのタンパク質輸送に関与する遺伝子の変異体において、胚性致死となるものは報告されているものの、発芽後の器官形成や分化に顕著な異常が見られるものがあるか否かは不明であった。シロイヌナズナのplastid protein import 2 (ppi2)は葉緑体外包膜のタンパク質輸送装置の構成因子の一つであるatToc159をコードする遺伝子の変異体である。今回我々はこのppi2において発芽後の植物形態に異常が認められるかどうかを組織学的に検討した。その結果、ppi2においては展開した葉の形態に異常が認められ、細胞間隙が増え、柵状組織と海綿状組織が形態的に区別できなくなっていた。また、茎頂分裂組織及びその周辺の葉原基の形態は野生型とほぼ同じであるが発生が進むにしたがって葉原基の形態に顕著な異常が見られることが分かった。