抄録
RNA干渉(RNAi : RNA interference)はsmall interfering RNA(siRNA)により仲介される転写後抑制型ジーンサイレンシング現象で、簡便に遺伝子発現をノックダウンできる手法である。RNAi現象を引き起こしている植物体において、遺伝子発現の抑制効果を検証するためには多くの時間と労力を費やさなければならない。そこで我々はパーティクルガンとRT-PCR法を用いて迅速にRNAi効果を評価できる実験系を開発した。我々は以前、タバコ小胞体型ω-3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(NtFAD3)をターゲットとして、RNAiコンストラクトを導入したタバコ(R11)を作出した。R11にはターゲットに相補的な配列を持つsiRNAが蓄積している。RNAiのターゲット領域に相当するNtFAD3遺伝子のゲノム配列の一部を35Sプロモーターに接続したコンストラクトを作製し、R11葉切片にパーティクルガンを用いて導入した。一過的に発現した転写産物はRT-PCRにより検出した。その結果、R11株では導入したコンストラクトの転写産物がRNAiによって分解されていることを確認した。この結果は、本検出系を用いることによりタバコにおいて簡便にかつ迅速なRNAiの評価が可能なこと示している。