抄録
ダイコン(Raphanus sativus)の液胞膜から単離されたCa2+結合タンパク質(RVCaB)は,既知CaBとの類似性はなく,全アミノ酸(248残基)の約1/3をグルタミン酸が占め、芳香族アミノ酸やシステインを含まない,きわめてユニークな可溶性の酸性タンパク質である。Ca2+がないと発現が誘導され,高濃度Ca2+で著しく減少するなどCa2+応答性の高い点も特徴である。機能理解をめざし,本研究ではRVCaBのタンパク質化学的特徴を明らかにすることを目的とした。
大腸菌発現系をもちいてRVCaBを発現させ,これを高収率で,高純度標品として大量精製した。CDスペクトル解析の結果は、不定形のランダムコイル構造を示した。さらに90℃に昇温すると微妙な構造変化が示されるが,これを20℃に降温すると元の構造に戻ることが示された。常温ではCa2+(10mM CaCl2)の有無での構造上の顕著な変化はみられないが,高温でのスペクトルに小さな差が見られた。これはCa2+との結合が微小な構造変化を伴うことを示している。また高感度等温滴定カロリメトリー法でCa2+結合を分析した結果、4つの高親和性Ca2+結合サイトが存在することが明らかになった。その他、詳細な結果も合わせて生理学的役割を考察したい。