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植物の老化において,クロロフィルの分解は光合成能の低下,および葉緑体膜の構造に変化を与えることにより,老化を起こすシグナルになると考えられている.しかしながら,クロロフィル分解経路は未解明の生化学代謝過程として残されてきた.
クロロフィル誘導体であるフェオホルビドaは,ピロフェオホルビドaへと分解される.ある種の維管束植物では,ピロフェオホルビドaの生成は2段階反応によることが当研究室で明らかとなっている.このピロフェオホルビド生成に関与する酵素,フェオホルビダーゼをダイコン(Raphanus sativus)より抽出し,高度に精製を行った.精製標品にSDS,メルカプトエタノールを加え,熱処理をしない状態でSDS-PAGEを行うと,77 kに単一のバンドが得られた.このサンプルに熱処理しSDS-PAGEを行うと,その処理時間に時間にかかわらず16.8k, 15.9k, 11.8 kの3本のバンドが得られた.この3つのバンドについてN末アミノ酸分析を行ったところ,それぞれ30残基のアミノ酸配列が明らかになった.得られた部分アミノ酸配列を基にプライマーを作成し,RT-PCRとRACE法を組み合わせて,ダイコンのフェオホルビダーゼ遺伝子のクローニングに成功した.