抄録
セネセンスでは葉から窒素源などの再利用可能な成分の他所への転流がみられる.このとき,液胞に含まれるシステインプロテアーゼが特に重要な役割を果たしている.
我々の研究で,蛍光ペプチドN-succinyl-Leu-Tyr-aminomethylcoumarin (Suc-LY-AMC)の分解活性を持つプロテアーゼがセネセンスの進行に伴って活性が急激に上昇することを示してきた.この酵素の機能を明らかにするためにホウレンソウ (Spinach oleracea) を用いて,酵素の精製と性質決定を行った.ホウレンソウの緑葉および暗所で人工的にセネセンスを誘導した葉を材料として用い,酵素の精製はホウレンソウの葉を破砕後,硫安分画,疎水,陰イオン交換,ゲルろ過の各種クロマトグラフィーを用いて行った.Butyl-Toyopearl疎水クロマトグラフィーによる精製過程において,溶出分画の異なる3つのピークが出現し,この3種類のプロテアーゼをButyl-Toyopearlの溶出順序に従ってacid cysteine protease (ACP) 1, ACP 2,ACP 3と命名した.本研究では,このうちACP 2およびACP 3の精製・性質についての解析結果を報告する.