抄録
亜鉛は生物に必須の栄養素であり、DNAポリメラーゼや、zinc finger転写因子などの様々なタンパク質の補因子として機能している。穀物における亜鉛欠乏が世界の多くの地域で報告されており、農業上の大きな問題の1つとなっている。本研究では、イネ22kオリゴマイクロアレイを用いて、亜鉛欠乏に応答する遺伝子を網羅的に解析し、亜鉛欠乏への耐性機構を考察した。
亜鉛欠乏により発現量が増加した遺伝子の中から、新規の亜鉛トランスポーターを同定した。また、金属キレーターであるデオキシムギネ酸の合成経路の遺伝子OsNAS3, OsNAAT1が亜鉛欠乏の地上部でup-regulateされていた。これらの遺伝子がコードしているタンパク質は、イネにおける亜鉛の輸送機構に関わっていると考えられる。
また、亜鉛欠乏によりstarch synthaseと糖輸送に関わる遺伝子の発現が増加した。亜鉛欠乏のイネは根と地上部に澱粉の蓄積が見られた。さらに、2つのRNase遺伝子の発現量も亜鉛欠乏により増加した。これらの遺伝子の塩基配列から予想されるアミノ酸配列はRNase活性に必要なヒスチジン残基を欠いていた。また、chitinase、PR-1などのpathogenesis-related protein遺伝子の発現も亜鉛欠乏によって増加した。これらの遺伝子の発現変化が亜鉛欠乏の症状と関連があるかどうかを考察する。