抄録
タバコ培養細胞BY-2からNi耐性変異株(NIT細胞)を選抜し、植物のNi耐性機構の解明を進めている。植物の重金属耐性機構の1つとして、細胞質内に進入してきた重金属を液胞へ隔離し解毒する方法がある。前報でNIT細胞は野生株よりも相対的に有機酸,ヒスチジンを多く含有していることを報告した。NIT細胞は有機酸がNiとキレート化合物を形成して細胞内でNi毒性を抑制している可能性が高い。そこでNiが細胞中のどこに局在しているのかを蛍光プローブ(Newport Green DCF)と共焦点レーザー顕微鏡で検出を試みた。Ni700μMの処理を行ったNIT細胞は液胞にのみ蛍光が検出された。よって、NIT細胞は取り込んだNiを液胞へ隔離していることが示された。また、液胞とミニプロトプラストを単離しNIT細胞と野生株でNiの取り込み速度の比較を行った。液胞では、クエン酸と共にNiを添加したNIT細胞が野生株よりも多くNiを取り込んだ。ミニプロトプラストでは野生株との違いはなかった。これによりNIT 細胞と野生株のNiの取り込み速度は、原形質膜ではなく液胞膜上にて違いがあり、NIT細胞はNiを有機酸とキレート化させて液胞へ取り込んでいる可能性が高いと言える。現在引き続き、野生株よりも高い含有率だったクエン酸,シュウ酸,リンゴ酸の有機酸を中心に液胞へのNi輸送活性を促進する物質を探っている。