抄録
植物が塩にさらされると、塩が体内に吸収・蓄積して障害が引き起こされる。塩の吸収・輸送活性は、膜に局在する塩輸送体や膜内外の電気化学的勾配により調節されるため、その調節に関与する因子の同定や機構の解明が重要である。酵母の細胞膜局在タンパク質PMP3は、細胞膜H+-ATPaseとは異なった細胞膜の電気的勾配の制御に関与し、塩吸収を調節すると報告されている。PMP3相同遺伝子は多くの植物で単離されているが、植物の耐塩性機構におけるPMP3の生理的役割は明らかになっていない。そこで本研究では、シロイヌナズナにおけるPMP3相同遺伝子であるRCI2Aに注目し、T-DNA挿入変異株rci2aを用いて植物の耐塩性機構におけるRCI2Aの生理的役割を調べた。
その結果、高NaCl処理下では、rci2a変異株は野生株に比べてより多くのNa+を根に蓄積し、生長が顕著に抑制された。したがって、RCI2Aは塩ストレス下において塩の吸収を制限することによって耐塩性に貢献していることが推察された。さらにrci2a変異株は過剰なKClやLiCl存在下でも野生株に比べて生長が顕著に抑制されたことから、RCI2Aは過剰なNa+, K+およびLi+による生長抑制に対する耐性に重要な役割を果たしていることが示唆された。