日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タバコモザイク病のモザイクパターン形成におけるサイレンシングの関与
*飯 哲夫久保田 健嗣平井 克之大西 純津田 新哉
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p. S45

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抄録
 タバコにタバコモザイクウイルス(TMV)が感染すると、上位葉に緑色の濃淡模様のモザイク症状が現れる。モザイク葉の淡黄部(YT)には多量のウイルスの蓄積が見られるが、濃緑部(DGT)にはほとんど検出されない。また、DGTは近縁のウイルスに対して抵抗性を示すことが知られている。
 PTGSは配列特異的なRNA分解系であり、その役割の一つはウイルスに対する防御であると考えられている。TMVが感染すると、TMV RNAを標的とするPTGSが起動するが、TMVの増殖が盛んなモザイクのYTでは、複製酵素の持つサプレッサー活性によりPTGSが強く抑制されていた。DGTでは、YTと接する部分でのみTMVに対するPTGSが強く認められた。他の観察結果もあわせると、TMVの上位葉への侵入時における細胞間移行・感染の成立が、TMVに対して働くPTGSシグナルの移行・PTGSの成立との間で競い合い、後者が優位となった細胞が葉の展開の過程で連なって境界を形成すると考えられた。一旦境界が形成されると、その境界を超えてのウイルスの感染域拡大は起こりえず、その結果境界は維持され、やがて目視できる濃淡模様の症状が現れるものと思われる。
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© 2005 日本植物生理学会
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