抄録
公衆衛生の歴史はフーコーによる統治性の系譜学の主要テーマの一つである。それを今日の環境主義に接続するには、革新主義期アメリカに注目することが有効である。本稿では政治的論理の反復/変形を示す2つの事例が提示され、検討される。ジェーン・アダムズは自らのmunicipal housekeepingの活動を伝統的な慈善活動であるsick visitingからの自然な発展であると主張した。そこでは個々人に対する司牧的視線がpopulationに対する統治的配慮に置き換えられているが、これはフーコーが17-18世紀のポリスに見出したものと同種の変形である。ギフォード・ピンショーのconservation movementは、功利主義の最大幸福原理を変形しつつ、統治的配慮の対象を現世代のみならず将来世代も含むものに拡張した。そこにはジョン・ミューアの司牧的言説が根拠を供給していた。