抄録
ブラシノステロイドは、高等生物間に広く保存されるステロイドホルモン類の一種である。1999年に浅見らによってブラシノステロイド生合成阻害剤Brzが開発され、多様な植物種に、多様な濃度で、多様な時期に、ブラシノステロイド内生量低下状況を作り出せるようになり、ブラシノステロイドの生理作用についての理解が進んだ。
続いて、我々はこのBrzを用いてアラビドプシス突然変異体のスクリーニングを計画した。ごく近年、生物制御化合物を用いて突然変異体のスクリーニングを行い、変異原因遺伝子の探索、またその遺伝子から化合物の性質を再規定する、という手法として化学遺伝学(ケミカルジェニティクス)という学問が提唱されているが、我々の研究計画はこの化学遺伝学の植物への先駆的適用例であると考えている。
実施法としては、Brz存在下で暗所発芽した野生型植物は、暗所にも関わらず光形態形成を示すという条件下を利用し、これに反してBrz暗所下胚軸が徒長する変異体bil(Brz-insensitive-long hypocotyl)を選抜して来ている。最初に単離したbil1変異から特定したBIL1タンパク質は、ブラシノステロイド刺激によって細胞質から核へ移行するブラシノステロイド情報の担体因子であった。他の変異原による新しいbil変異体群についても紹介したい。